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海外移住、何を持っていき、何を諦めるべきか【判断基準編】

海外移住

「機能」は買えるが、「情緒」は買えない

マルタに来て、早いもので2カ月半が経ちました。かなりいろいろなお店をまわったので、現地に何があって何がないのか、だいぶわかってきました。

これは持ってくれば良かったなあと思うものや、持ってきて良かったと思うものも、だいぶハッキリしてきた気がします。その具体的なリストは別記事に譲るとして、今回は、もっと概念的な部分のお話をしたいと思います。

マルタは小さな島国なので、ヨーロッパの中では少し不便なほうなのかなーと思います。
それでも先進国なので、お金を出せばたいていのものは買えます。

送料はちょっと高いけど、最悪、Amazon.deやUKで取り寄せられないこともありません。
iHerbだって届きます。

でも、「お気に入りのもの」って、買い直しできないんですよね。

たとえばマグカップ。

コップという「機能」は、そこらへんのスーパーで€3~5くらいで買えます。
でも、日本で愛用していたマグカップと同じものは、おそらく買えません。

自分がどれくらいそれを気に入っているか。

海外移住に際して持っていくかどうかを決めるとき、これが意外と大事な尺度だなと思います。

たとえば私は料理が好きで、鉄瓶と土鍋、ストウブ、ル・クルーゼを諦められませんでした。
(ル・クルーゼはマルタでも買えますが、どこにでもあるというほどではないようです)

とくに土鍋は数年かけて吟味したもので、この佇まいが大好き。

見ているだけで幸せを感じます。これで沸かしたお湯は本当においしいし、これを使い始めてから立ちくらみもなくなった気がします。

14cmのストウブも、ほぼ毎日、1~2回使うレベルの愛用品。

1人分の食事にちょうどいいサイズ感で、ご飯を1合だけ炊くとか、2人分のお味噌汁を作るのにもいい。

ル・クルーゼで作った煮込み料理や、土鍋で炊いたご飯もおいしい。どれもこれも、手放すなんて考えられなかった。

Thermosの取っ手が取れるフライパンセットも気に入っていたけど、理由は利便性と機能性。おいしさや佇まい、愛おしさという点で、上記の4つに対するほど強い執着はなく、さすがにどこでも買えるなと思って諦めました。

重量級の鍋類ばかりで持ってくるのは大変だったし、お金もそこそこかかりました。
でも、それで良かったなと思っています。

私はこの鍋たちにすごく愛着があって、使っているとき、すごく幸せな気持ちになるんです。
いつものシリコン菜箸やその他の調理器具も同様。

重要なのは「値段」ではなく、「どれだけ気に入っているか」です。

なかなか生活が落ち着かなくて、わからないことばかりで、すごく心細かった異国での生活。
そのなかで、大好きなモノたちは、たしかに私の心を支えてくれました。

家族や友達のように、いつもと同じモノに囲まれている。
それだけで安心できました。

鍋という「機能」は買えるけど、こういう「情緒」は買えないのです。

ちなみにフライパンは、スーパーで新しいのを1つ買いました。
数千円なのでお財布もそれほど痛くなかったし、いまの広いキッチンにも合う。

すでに新たなお気に入りになっています。

ちなみにドイツ・Turkの鉄製フライパンを日本より割安に買えるかもという気持ちもあったけど、今のところ見つけられていません(笑)。ヨーロッパは安く行けるので、旅行したときに見つけたいなあ。

「一生モノ」か、「消耗品」か

さて。持ってきたものと、手放したもの。

この2つの判断基準は、「一生モノ」か、「消耗品か」という点にもあるかもしれません。

たとえば私はニトリのシリコン菜箸が大好きで、先端が傷んできたら同じものをリピート購入しています。

消耗品ではあるけれど、繰り返し同じものを買い続けるというのは、一生モノとほぼ同義です。
たまたま壊れやすいだけで、ずっと続けたいという気持ちがあるわけです。

実際、毎日使っていて、持ってきて本当に良かったな~と思っています。

逆に、ほとんど置いてきたのは食器とカトラリー類です。

私はわりとよく落として割ってしまうので、あまり高級なモノは持たないようにしています。

無印良品とかラデュレとか、あまり主張しない、でもシンプルで機能的な、居心地のよさを与えてくれるようなものを好んで使います。

どれもお手頃価格の消耗品です。おかげで今回の海外移住でも、わりとあっさり「まあいいか」とお別れできました。

ラデュレはフランスの製品なので、マルタでも簡単に買えると思っていたのもありますが、意外と見つからない&思ったより高かったです(笑)。

そんなわけで、食器類はほとんどこちらに来てからインテリアショップでそろえました。

私にとって、食器はファブリックに近いのかもしれません。
まだ買ったばかりですが、今のキッチンや気分にフィットするので、使っていてとても心地よいです。

逆に、調理器具はたんなる道具でこだわりがなく、とにかくお気に入りの食器で食べることに幸せを感じる!という人もいるはず。

そういう「自分にとっての幸せ感」を与えてくれるものは、手放さないほうがいいと思います。

「毎日、使うたびに幸せを感じるモノ」は「自分の一部」

私が置いてきてしまったもので「なんで持ってこなかったんだろう」「どうしてあれがないんだろう」と日々感じているのは、Thermosの保温ポットです。

真夏以外、ほぼ毎日、鉄瓶で沸かしたお湯を入れていたものです。

なんとなく、自分の一部が欠けてしまったような喪失感があります。

気に入っていたので、もちろんはじめは持っていこうと思っていました。でも、荷造りを進めていくと重量がギリギリになってきました。

そこで「夏は使わないから」とか、「保温ポットくらいマルタでも買える」と考えて、置いてきてしまったんです。

ところが、いざ来てみたら、まだまだ寒い。お湯をたくさん沸かしても冷めてしまうので、一杯分ずつしか沸かせず、単純にないと不便です。かといって、急いで買い直さないと困るというほどでもない。

たまに買い直そうかと手にとってみても、なかなか気に入るものがありません。
あの色味やフォルム、使い勝手なども含めて気に入っていたんだと気づかされるばかりです。

「ほぼ毎日使うモノ」で、「使うたびに気持ちが満たされるモノ」は、できるだけ諦めずに持ってきたほうがいいんじゃないかな~と思います。

シュノーケリングのセットは絶対使うと思って持ってきたけど、それこそデザインにこだわりもないし、現地で買えるものでした(苦笑)。

気に入っていたはず、だけど…?

とはいえ、気に入っているかどうかって、意外と難しいものです。

たとえばMAWAハンガー。

高いけど、そっくりさんではなく、本物を買い集めていました。気に入っていると思っていました。

でも、心のどこかに、重くてかさばるなーという気持ちもあったのかもしれません。フックの金属部分の質感や、本体同士がぶつかったときのあの感じ。振り返ってつぶさに観察すれば、100%大好き!とは言いきれなかったような気がします。

はじめは持っていくつもりでしたが、あまりに重いので、すべて諦めて置いてきました。

こちらに来てから、プラスチック製のハンガーに買い替えました。ほかのハンガーに比べると少し高かったですが、機能や質感、色味など、使っていて心地よく、とても気に入っています。

ああ、惑わされていたなあ…と思いました。

もちろんMAWAハンガーは見た目がおしゃれで、持っていていい気分でした。クローゼットを見たとき、高揚感も与えてくれました。

でも、そのうちの何割かは、心地よさではなく、優越感や所有欲だった気がするのです。手放すときは泣きたいくらい心が痛みましたが、その一部は「高かったのになあ」とか、ステータスを失うことの痛みだったのかも…。

これはあくまで「私にとって」の話ですし、日本の家で使っていたときはすごく気に入っていました。とくに夏服用に使っていた細いタイプは、軽やかで大好きでした。

でも、なくなったら喪失感があるかというと…少なくとも、私にとってはそこまでの存在ではなかったようです。

もともと私はあまりブランド物に興味がないタイプですが、インスタのインテリアアカウントなどを見るのは好きで、そこで人気のアイテムを買いそろえてしまうことがありました。そういう、ちょっと邪(よこしま)な気持ちというか、見栄のようなものが混じっていると、本当の気持ちが見えにくくなるのかもしれません。

どんな家に住むかで、必要なものが変わることもある

そうはいっても、実際に生活を始めてみないとわからないこともあります。

とくに家具付きが当たり前の家では、良くも悪くも、インテリアを自分ですべて選べるわけではありません。

また、その国の生活やら環境やらで、必要なものが変わったりもします。

たとえば、些末なことですが、冷蔵庫で使っていたボトルストッパー。
今の家の冷蔵庫には、ボトルラックが付いているので不要でした。

こういう細かなことは、本当に来てみないとわかりません。

100%完璧に取捨選択するというのは不可能だと、割り切ることも大切です。

でも、だからこそ、「お金では買えないモノ」「愛着のあるモノ」を優先したほうが、後悔せずに済むんじゃないかなと思います。

ちなみに、愛着はあるけど、機能的にあまり必要ないものは、家族や友人に預かってもらうのも手です。

私は浴衣一式とか、日本でしか使えないスマートホーム系デバイスはお願いしちゃいました。後者は時間があればメルカリで売りたかったのですが、時間が足りず…。そのあたりはまた別記事で詳述します。